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AI推進担当者は専任にすべき?|中小企業のDX停滞を防ぐ3つの改善策

中小企業でAI推進担当を兼任にする際の課題と3つの改善策を解説。推進時間の確保、判断と実務の役割分担、手順の文書化に加え、専任化の判断基準と体制見直しシートを紹介します。

AI推進担当者は専任にすべき?|中小企業のDX停滞を防ぐ3つの改善策

「AIに詳しそうだから、まずはよろしく」

専任組織を新設する余裕がない中小企業や成長企業において、関心の高い社員にAI推進を兼任させるスタートは自然な流れです。

しかし、任された社員のスケジュールはどうでしょうか。

推進担当になる前と同じ業務量で埋まったままになっていないでしょうか。

既存の通常業務に加えて、ツールの選定、社内説明、日々の問い合わせ対応が重なれば、AIの検証時間はどうしても後回しになります。意欲はあっても手が回らず、結果として現場が元のやり方に戻ってしまうケースは少なくありません。

AI推進の体制づくりにおいて不可欠なのは、「新しい役割を任せるなら、手放す業務も同時に決める」という視点です。

本記事では、兼任担当者の孤立を防ぎ、着実に成果を出すための「3つの改善策」「体制見直しの判断基準」、そして「社内協議用シート」を解説します。


1. 推進時間の確保(既存業務の引き算)

兼任体制で最初に直面する課題は、本業の繁閑によって推進活動が止まってしまうことです。

「業務が落ち着いたタイミングで試そう」を繰り返していては、研修で得た知見や試作ツールの改善案も実務へ定着しません。

たとえば、営業事務の担当者が「提案書作成の効率化」を目的にAI推進を兼任したモデルケースを考えてみます。

担当者に試す意欲があっても、月末の受注処理や定例会議の資料作成に追われていれば、検証は翌週、翌々週へと延びていきます。この状況で進捗報告だけを求めても状況は好転しません。

実効性を持たせるためには、以下の手順で時間を確保します。

  1. 予定表への事前ブロック:推進活動に充てる時間をあらかじめ勤務スケジュールに組み込む。
  2. 既存業務の引き算:その時間枠にあった通常業務をどうするか決める(定例資料の簡略化、急ぎの問い合わせ対応の代理立てなど)。

AI推進を兼任する担当者の時間確保

予定表に枠を取るだけでは業務量は減りません。

また、確保すべき時間には「本人の調査・試作時間」だけでなく、「現場へのヒアリング、操作説明、効果測定」や「検証に協力する現場社員の時間」も含める必要があります。

推進時間が通常業務で繰り返し削られている場合は、担当者の業務負荷を下げるか、AIで取り組む対象範囲を縮小する調整を行いましょう。


2. 「判断」と「実務」の役割分担

次に起こりやすいトラブルは、あらゆる質問や相談が一人の担当者に集中し、その回答待ちで現場の動きが止まってしまうことです。

提案書作成の例でも、現場からは次のような多様な質問が寄せられます。

  • 「この社内資料をAIに入力しても問題ないか?」(情報セキュリティ)
  • 「有料プランを契約してよいか?」(予算管理)
  • 「AIが生成したこの内容を顧客に提出してよいか?」(営業責任・品質保証)

ツールの操作に詳しい社員一人に、情報管理や予算、ビジネス上の最終責任まで背負わせるのは現実的ではありません。

組織として持続可能な推進を行うため、次のように役割を分担します。

役割 主な担当者例 決定事項・担当業務
経営判断 経営者・事業責任者 対象業務の優先順位決定、予算承認、推進時間の確保、利用ガイドラインの策定、継続・拡大の判断
推進実務 AI推進担当者 検証スケジュールの設計、疑問点の整理、操作支援、手順書や検証結果の社内共有
現場検証 現場担当者・管理職 既存業務の手順や例外処理の共有、実際の試用、生成物の品質および業務効率の確認

新たに3人を採用する必要はありません。少人数組織であれば、経営者が事業責任者を兼務するなど、実情に合わせて役割を割り当ててください。

「担当者が裁量で決めてよい範囲」と「経営層への確認が必要な項目」を明確にしておけば、相談窓口を一元化しても担当者一人が判断を抱え込む事態は防げます。

AI推進の相談窓口と意思決定の分担

また、経営層は「取り組むべき業務の優先順位」を明確に示すことが重要です。発生頻度が高く、複数人が工数を割いている業務を優先し、売上やコスト、品質への影響度と導入の難易度を勘案して、まずは小さな業務範囲から着手します。


3. 手順と判断基準のドキュメント化

3つ目の課題は、ツールの使い方や運用の経緯が担当者個人の頭の中にしか残らない「属人化」です。

担当者の不在や異動によって業務が滞るようでは、組織的な定着とは言えません。

AIでうまく資料が作成できたとしても、完成物だけを共有していては、料理の完成写真を見せられたようなものです。同じ成果を他の社員が再現するには、材料(入力情報)、調理手順(プロンプト)、味見の基準(チェック項目)が必要です。

AI活用手順を共有するための記録

AI活用を標準化する際は、最低限以下の4点をドキュメント化します。

  • 準備するもの:利用を認可したツール、入力可能な資料、参照先
  • 作業手順:AIへの指示文(プロンプト)、操作フロー、つまずきやすいポイント
  • 確認の目安:数値、固有名詞、表現など、人間が目視でチェックすべき基準
  • トラブル時の対応:エスカレーション先、代理対応者、従来の運用へ切り替える条件

共有場所は、社内で日常的に使われているポータルや共有フォルダで構いません。常に最新版が参照できる状態を作ります。

作成した手順書は、別の社員に実際に試してもらうことで検証します。「必要な資料の場所がわからない」「意図しない出力が出た際の対処法が不明」といった疑問点を手順書に追記していくことで、ドキュメントの精度が高まります。

主担当者だけでなく、基本操作や経緯を把握している副担当者を立てておくと、引き継ぎも円滑に進みます。


兼任継続・分担・専任化の判断基準

推進体制を整えたうえで、現在の兼任体制を維持できるかを判断します。担当者の人数だけで決めるのではなく、「推進の対象範囲」と「実際に割ける実働工数」のバランスで評価します。

新たな推進業務のために手放す仕事の整理

現在の状況 見直しの方向性
対象業務が限定されており、推進時間・判断者・代替要員が確保できている 兼任を継続(対象範囲を広げる前に負荷状況を再確認)
問い合わせ対応や部署間調整が増加し、検証作業の時間を圧迫している 役割を分担(現場窓口や社内教育の役割を他メンバーへ分散)
対象業務を絞り込み、役割を分担しても、改善に必要な時間を継続確保できない 体制の拡充(既存業務を本格的に外して専任化するか、体制を強化)

担当者には、検証・説明・問い合わせ対応・調整に費やした工数を簡易的に記録してもらうことをおすすめします。

「忙しい」という感覚値ではなく、どの工程に時間を奪われているかを可視化することで、適切な分担策が見えてきます。

繁忙期特有の一時的な工数不足なのか、構造的・恒常的な不足なのかを切り分けることも重要です。


試行後の評価とネクストアクション

プロトタイプを作成した後は、「実務がどう変わったか」を検証します。

AIによる初稿作成が5分で完了したとしても、前後の準備や修正に多大な工数がかかっていれば、トータルの効率は上がっていません。

モデルケースでの作業工数比較(仮定値)

従来は1件あたり60分かかっていた提案書作成を、AI活用によって「準備15分+生成5分+修正35分=55分」に短縮できたとします(週5件作成)。推進担当者のサポート工数も含めて比較すると、以下のようになります。

1週間の作業工数 AI活用前 AI活用後
提案書作成(5件) 300分 275分
サポート工数(説明・手順更新など) 0分 60分
合計 300分 335分

提案書の作成自体は1件あたり5分削減されていますが、立ち上げに伴うサポート工数を含めると、組織全体では週に35分の作業時間が増加しています。

ただし、初期段階で工数が増加したからといって、即座に導入を断念する必要はありません。社内の習熟度が上がり、手順書が整えば、次週以降のサポート工数は縮小していきます。

重要なのは、「確認・修正の35分」に何が含まれているかを分析することです。元の参照資料の古さが原因なのか、プロンプトの精度不足なのか、用途に応じた対策を打ちます。

評価のチェックポイント

事前に「評価日(レビュー日)」を決め、経営層・推進担当・現場の三者で以下の判断を行います。

  • 継続・拡大:合意した品質を満たし、工数削減の効果が確認でき、運用負荷も許容範囲内にある場合
  • 修正して再試行:課題とボトルネックが明確で、改善策と担当者を具体的に特定できる場合
  • 一時停止:求める品質水準や情報管理基準を満たせず、改善の見込みが立たない場合

作業スピードだけでなく、「価格や実績値の正確性」「顧客課題との整合性」「情報管理の安全性」など、業務に耐えうる品質基準が満たされているか、また担当者以外の社員でも再現性を持って運用できているかを確認します。


30分で整理できる「体制見直し確認シート」

大規模な推進組織を立ち上げる前に、まずは担当者と30分の打ち合わせを設け、以下の項目を整理してみてください。

確認項目 打ち合わせで決定すること
対象と期待効果 最初に検証する業務・範囲/目指す変化/クリアすべき品質水準
時間の確保 主担当・協力者の推進工数/そのために手放す(削減・移管する)通常業務
判断の範囲 主担当が自己判断できる範囲/経営側・管理側へ確認する事項と判断者
運用の引き継ぎ 手順書・ログの保管場所/主担当不在時の代理担当者
振り返り計画 効果測定を行う日(レビュー日)/比較対象とする工数・品質基準

一度の会議ですべてを決めきれない場合は、未決事項の確認担当者と期日を設定します。決定事項を持ち帰る役割をAI推進担当者だけに押し付けず、経営側・現場側も分担して引き受けることが、円滑な推進への第一歩となります。


外部支援を有効に活用するために

社内リソースだけで推進時間や専門知識の確保が難しい場合は、外部リソースの活用も選択肢の一つです。

外部支援を検討する際は、研修だけでなく、自社業務の棚卸し、実務に即したワークショップ、試行中の問い合わせ対応、手順書のブラッシュアップまで、どこまで伴走してもらえるかを見極めます。

また、支援終了後に社内に何が残り、誰が運用を維持できるかという「内製化の視点」を持っておくことが不可欠です。

ミチガエルでは、担当者様が現在抱えている業務負荷と、貴社が優先して改善したい領域を丁寧にヒアリングしたうえで、社員の習熟度に合わせた検証ステップ、必要な研修、社内と支援側の役割分担をトータルで設計します。

まずは既存の業務を一つ手放すことから始め、任せる範囲とそれを支える社内体制を整える。

担当者の意欲を組織全体の成果へとつなげる仕組みづくりを、ぜひ進めてみてください。

この記事の執筆・監修

t-yamashita

執筆

山下 敏樹

IT/AIコンサルタント

IT企業勤務。Web制作会社で社内業務改善・DX推進に携わり、code4bizで学んだAIコーディングを活用してさまざまな業務を自動化。半年間の取り組みで、年間約2,500時間相当の業務削減を実現。その後、IT/AIコンサルタントへ転身。DX現場での経験をもとに、AI活用・業務改善・DX・システム開発に関する知識やノウハウを、読者の成果につながる形で発信しています。

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