「生成AI研修に助成金を使いたい。けれど、対象になる研修も、申請を始める時期も分からない」
生成AI研修では、厚生労働省の「人材開発支援助成金」が候補になります。[1] まず押さえたいのは、次の3点です。
- 研修内容:受講者が担当する具体的な職務と、学ぶ技能とのつながりを確認する。[3]
- 提出期限:2026年度の計画届は、原則として研修開始日の6か月前から1か月前までに提出する。[7]
- 来年度の扱い:2027年度は、公表済みの概算要求と、確定した支給条件を区別して検討する。[9]
計画届とは、研修前に提出する「職業訓練実施計画届」のことです。受講後には、助成金を受け取るための支給申請も行います。[2]
この記事では、公的資料を基に対象条件と助成額を整理し、2027年1月開始を例に「いつ、何を用意するか」を解説します。2027年度の研修に向けて、今できる準備も確認できます。
情報の基準日は2026年10月です。今年度は2026年4月〜2027年3月、来年度は2027年4月〜2028年3月を指します。2027年1〜3月に実施する研修は、2026年度に含まれます。
生成AI研修で検討できる3つのコース
人材開発支援助成金は、企業が雇用する労働者に計画的な職業訓練を行った場合などに、訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。[1]
生成AI研修を検討するときは、まず次の3つを見比べましょう。
| 2026年度のコース・メニュー | 検討する場面 | 中小企業の経費助成率の例 |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 事業展開や社内のDX(デジタル技術による業務変革)などに伴い、職務に必要な技能を身につける | 75% |
| 人材育成支援コースの「人材育成訓練」 | 現在の職務に関連する専門知識・技能を学ぶ | 正規雇用労働者等は通常45% |
| 人への投資促進コースの「定額制訓練」 | サブスクリプション型の研修サービスを利用する | 通常60% |
出典:[2][4][5]。表には、代表的な区分の助成率を示しています。雇用形態、賃上げ等の要件、研修内容によって適用される助成率が変わり、各メニューに支給限度額があります。
表の「中小企業」に当たるかどうかは、主たる事業の業種に応じた資本金等、または企業全体で常時雇用する労働者数を基に判定されます。判定に使うのは、支給申請時点の状況です。資本金等がない事業主は労働者数で判断します。自社の区分は、資料[2]の冊子12ページで確認してください。
たとえば、営業部門で生成AIを使った提案業務の見直しを進めるなら、事業展開等リスキリング支援コースを検討できます。一方、同コースの条件に合わない研修は、他のコースの条件と照合する必要があります。
利用するコースは、研修の目的と各コースの条件を照らし合わせて選びます。自社で変えたい業務を具体的にしておくと、研修会社や労働局にも相談しやすくなります。
2026年8月改正の対象条件
2026年10月から新たに計画するなら、同じ年度の中でも改正日を確認しましょう。
事業展開等リスキリング支援コースでは、原則として2026年8月3日以降に提出する計画届に、同日改正の支給要領が適用されます。契約・申込時期などによる経過措置もあります。[7]
職務に直結する生成AI研修
厚生労働省の改正リーフレットには、生成AI研修の例が載っています。
| 公的資料が示す例 | DXに関する訓練としての扱い |
|---|---|
| 営業担当者が、生成AIを使った商品提案書の構成・文章作成や修正を学ぶ | 営業の具体的な業務に直接使えるため、助成対象の例 |
| 特定の業務での使い方を伴わず、一般的なプロンプトの作成を学ぶ | 汎用的な内容のため、助成対象外の例 |
出典:[3]。個別の研修の支給可否は、ほかの要件も含めて審査されます。

この区別を踏まえると、研修会社に確認したいのは「どの部署の、どの仕事を題材にするか」です。
たとえば、営業担当者が提案書の構成を考え、生成AIで作った文章を修正する業務が挙げられます。研修で学ぶ内容とその業務の関係を、カリキュラムで説明できるか確認しましょう。
「生成AIを学ぶ」というテーマを、受講者の具体的な仕事と結びつけて考えることが大切です。
eラーニングの受講回数
改正後の同コースでは、助成を受けられる受講回数は1人につき1年度3回までです。このうち、2026年8月3日以降の計画届に基づくeラーニングによる訓練は、1年度1回までとなります。eラーニングを組み合わせる研修も含まれます。[3]
ここでいう年度は、支給申請日を基準に数えます。動画講座を複数回に分けて申し込む場合は、受講履歴と支給申請の予定日を合わせて確認してください。[3]
定額制サービスには別の回数制限があるため、利用するコースの支給要領も確認しておきましょう。[7]
会社・受講者・研修の条件
ここからは、事業展開等リスキリング支援コースを中心に見ていきます。
会社と受講者の要件
まず、申請する事業所が雇用保険の適用事業所であり、受講者がその事業所の雇用保険被保険者であることが基本です。さらに、職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の作成・周知などが必要になります。[2]
職業能力開発推進者は、社内の人材育成を進める担当者です。計画届を提出するまでに、担当者を選任し、育成方針を整えておきましょう。[4]
研修形式ごとの時間・修了要件
研修は、通常の業務から区別して行うOFF-JTで、職務との関連性が必要です。時間数や受講状況の条件は、研修形式によって異なります。[2]
| 研修形式 | 時間・期間の主な要件 | 受講・修了の主な要件 |
|---|---|---|
| 対面・同時双方向型の通信訓練 | 計画届を提出するときと支給申請をするときのどちらも、1コースの実訓練時間が10時間以上であること | 原則として実訓練時間の8割以上を受講すること |
| eラーニング・通信制 | 1コースの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上であること | 訓練期間中に受講を修了し、LMS情報や添削課題等で実施状況を確認できること |
| 定額制サービスによる訓練 | 各受講者が修了した訓練の標準学習時間が、支給申請時に合計10時間以上であること | 訓練期間中に受講を修了し、合計時間を教育訓練機関が発行する一覧表で確認できること |
出典:[2]冊子17・22ページ。休憩・移動や助成対象外の内容に当たる時間は、実訓練時間に含めません。標準学習時間・期間は、講座を習得するために通常必要なものとして、受講案内等で定められた時間・期間です。[2]
同時双方向型とは、受講中に講師へ質問できるライブ形式のオンライン研修です。一方、eラーニングでは、LMS(学習管理システム)等で進捗を管理できることが必要になります。[2]
eラーニングを選ぶ場合は、受講者の修了日や受講日時、時間数、進捗率を確認できるか、また、それらの記録を取得できるかも研修会社に聞いておきましょう。[2]
会社は研修中の賃金も適正に支払う必要があります。会社が受講を義務づける研修では、録画視聴であっても労働時間として扱う点を押さえてください。[2]
これらは主な条件です。講師・教育訓練機関の要件や、雇用関係助成金に共通する要件も含めて確認します。[1][7]
研修形式別の助成額と上限
2026年度の事業展開等リスキリング支援コースの通常分は、次のとおりです。
| 企業規模 | 対象経費に対する助成率 | 賃金助成の額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1人1時間あたり1,000円 |
| 中小企業以外 | 60% | 1人1時間あたり500円 |
出典:[2][7]。賃金助成は所定労働時間内などの要件を満たす訓練時間が対象です。eラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練などは経費助成のみとなります。
たとえば、中小企業で1人あたり30万円が対象経費と認められた場合、75%を掛けると22万5,000円です。ただし、実際の支給額には限度額が適用されます。
対面・同時双方向型で10時間以上100時間未満の研修なら、中小企業の経費助成は1人1訓練あたり30万円が上限です。eラーニング・通信制は15万円、定額制サービスは1人1月あたり2万円と、形式によって上限が変わります。eラーニング等を対面研修と組み合わせる場合も、該当する上限を確認します。[2][7]
見積額に助成率を掛けるだけでは、受給予定額は決まりません。
対象経費の範囲、人数、受講状況、限度額を確認してから試算しましょう。また、訓練経費は原則として支給申請までに会社が全額を負担する必要があります。助成金の入金を待って研修費を支払う資金計画にはできません。[6]
計画届から逆算する準備日程
助成金の準備では、受講前の計画届と、受講後の支給申請の両方を日程に組み込みます。
研修日だけ決めてから書類を集め始めると、計画届の期限に間に合わないことがあります。計画届の期限から、情報をそろえる期間を見込んで準備日程を逆算しましょう。
開始1か月前までの計画届
2026年度の支給要領は、計画届の提出期間を次のように定めています。
訓練開始日の6か月前から1か月前まで
出典:[7]「0602 提出期間」から抜粋。
たとえば、2027年1月18日開始なら、通常の提出期間は2026年7月18日〜12月18日です。「1か月前」は30日前への置き換えではなく、原則として前月の同日で考えます。前月に同日がない場合や、期限が休日の場合の扱いは、支給要領に従います。[7]
郵送は労働局への到着日で判定されます。電子申請を利用する場合はGビズIDなどの準備も必要です。[2]
2027年1月開始のモデル日程
次は、対面または同時双方向型の研修を、2027年1月18日・25日に各6時間、計12時間行うと仮定した準備例です。休憩時間は含めません。

| 時期 | 準備・実施すること |
|---|---|
| 2026年10月下旬 | 改善したい業務、対象部署、受講者候補を整理し、管轄労働局に利用条件を相談する |
| 11月 | 研修会社と内容・日時・費用を具体化する。社内の担当者を決め、育成計画と必要書類を整える |
| 12月上旬 | 社内の提出目標。計画届と添付書類を提出し、必要な補正に対応 |
| 12月18日 | この例における通常の計画届提出期限 |
| 2027年1月18日・25日 | 計画に沿って研修を実施し、出欠・受講時間・実施内容を記録する |
| 1月26日〜3月25日 | 通常の支給申請期間内に、経費の支払いと必要書類の整備を済ませて申請する |
期限の算定根拠:[2][7]。10月〜12月上旬の準備時期は、余裕を持って進めるための編集部による提案例です。
支給申請の原則は、公式パンフレットの次の記載が基準になります。
訓練終了日の翌日から2か月以内(厳守)
出典:[2]冊子44ページ。
ここでいう終了日は、原則として計画届に記載した訓練実施期間の最終日です。eラーニングや定額制サービスには早期申請などの取扱いがあるため、上のモデル日程をそのまま当てはめないようにしましょう。[2]
なお、計画届の提出は支給の保証ではありません。支給可否の審査は、支給申請後に行われます。研修日の変更などが生じたら、変更届の要否と期限を労働局に確認してください。[2]
提出時期に合わせた資料の準備
計画届に添える書類
事業展開等リスキリング支援コースでは、職業訓練実施計画届に加え、事業展開等実施計画、対象労働者一覧、事前確認書などを準備します。厚生労働省の申請書類ページには、2026年8月3日以降の計画届に対応する様式が掲載されています。[8]
社内の担当者は、対象者の雇用保険の状況を確認し、会社の取組と研修の関係を事業展開等実施計画に記載します。研修会社には、受講形式に応じて次の資料を依頼しておきましょう。[2][7]
- カリキュラム・受講案内:研修の目的、内容、実施日時・場所、実訓練時間数、料金が分かるもの。
- 契約書や申込書等:事業外訓練では、教育訓練機関の名称・連絡先、契約内容・期間、料金を確認できるもの。
- 学習方法の説明資料:eラーニング等では、標準学習時間・期間、学習管理や添削指導の方法など、形式に応じた条件を確認できるもの。
出典:[2]冊子42ページ。必要な様式や追加資料については、研修内容を示したうえで管轄労働局にも確認しましょう。
支給申請に向けて用意する書類
受講後の申請では、研修の実施・修了、費用の支払いなどを示す資料が必要です。研修会社が、実施状況報告書の作成に必要な情報や、修了証・LMS情報などを提供できるか、申込前に確かめておきましょう。対面・同時双方向型では、賃金台帳や出勤簿等も準備します。[2]
また、経費助成を申請する場合は、「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」も支給申請時に提出します。研修会社と、記載内容や資料の準備を早めに相談しておきましょう。[1][2]
社内では、勤怠や賃金、費用の支払いに関する記録を残す担当者を決めておきましょう。受講前に支給申請の書類まで確認しておくと、研修終了後の準備を進めやすくなります。
2027年度の公表状況と準備
来年度の研修予算を考える際には、制度の公表段階を確認しましょう。
厚生労働省の2027年度概算要求では、人材開発支援助成金に602億円が要求されています。資料には「訓練実施コース」「休暇制度導入コース」という構成が示され、訓練実施コースには一般訓練、特定訓練、団体訓練が記載されています。[9]
一方、2026年度の資料では、事業展開等リスキリング支援コースなどは2026年度末までの時限措置とされています。[4]
2027年度の研修については、予算成立後の支給要領で、名称・助成率・対象条件を確認してから受給額を見込みましょう。概算要求は、来年度の支給条件を確定した資料ではありません。
2027年4月以降の研修を予定しているなら、対象業務を選ぶ、受講者を整理する、必要な学習内容を具体化する、研修費を見積もるといった準備は、今から進められます。制度が確定した段階で、対象訓練、助成率・上限、計画届の受付時期、経過措置を確認し、予定している研修と照らし合わせましょう。
年度をまたぐ計画については、計画届の提出日、訓練開始日、支給申請日のどの日付を基準に適用条件が決まるかを、管轄労働局に確認しましょう。
まずそろえたい3つの情報
まず社内でそろえたいのは、「対象業務」「受講者」「実施希望日」です。
その情報を基に研修会社と内容を具体化し、管轄労働局に利用するコースと条件を相談しましょう。計画届の提出目標に加えて、受講後の支給申請まで担当者と日程を決めておきましょう。
2026年度中に始める場合も、2027年度に実施する場合も、業務上の必要性と制度の公表状況を確かめながら、余裕のある準備日程を組むことが大切です。
参考・出典
- 1. 人材開発支援助成金(制度概要・各コース・最新のお知らせ)
- 2. 2026年度「事業展開等リスキリング支援コース」のご案内・詳細版(2026年8月3日版)
- 3. 事業展開等リスキリング支援コース改正・2026年8月3日からの変更点
- 4. 2026年度「人材育成支援コース」のご案内・詳細版(2026年8月3日版)
- 5.[2026年度「人への投資促進コース」のご案内・詳細版(2026年8月3日版)
- 6. 2026年度「事業展開等リスキリング支援コース」のご案内・概要リーフレット(2026年4月8日版)
- 7. 事業展開等リスキリング支援コース支給要領(2026年8月3日版)
- 8. 人材開発支援助成金の申請書類(2026年8月3日以降の計画届に対応)
- 9. 2027年度概算要求の概要・人材開発統括官(2026年8月公表)




